投稿前に確認したい
論文の図の作り方
論文の図は、本文を読まなくても何が示されているかがわかることが理想です。このページでは、図を作るときの基本ルール、サイズと解像度、用途別のソフト、図の説明文の書き方、投稿前のチェックリストをまとめました。
図を作るときの8つの基本ルール
多くの分野・ソフトに共通するルールです。最終的には、投稿先の投稿規定(author guidelines)が優先します。
- 01
本文で言及する順に番号を付ける
図もパネルも、本文で最初に触れる順に並べます。「Fig. 1」「Figure 1」などの表記は、投稿先の過去の論文に合わせます。図と表はそれぞれ別に通し番号を付け(Figure 1、Table 1)、補足の図はSupplementary Fig. S1などとします。
- 02
パネルを割り付けて無駄な余白を減らす
1枚の図に複数のパネルを並べるときは、縦横比を調整して、図全体が長方形に収まるようにします。パネル記号の書式は誌によって異なり、Natureは小文字の太字(a、b)、Cell Pressは大文字(A、B)です。
- 03
フォントを統一する
欧文はArialかHelveticaなどのサンセリフ体にそろえ、図の中でも図どうしでも大きさを統一します。英文誌の図に日本語フォントは使いません。文字の大きさは最終サイズで決め、例えばNatureは5〜7ptを求めています。
- 04
すべてを整列させる
パネルの端、軸、ラベルの位置を縦横にそろえ、間隔を均等にします。PowerPointやIllustratorの整列機能を使えば、手作業より正確にそろいます。
- 05
凡例と単位は図の中に書く
色や記号の意味、軸のラベルと単位、顕微鏡写真のスケールバーは図の中に入れます。図の説明文と見比べなくても読めるようにするためです。
- 06
色に意味を持たせる
同じ条件には同じ色を使い、色数は必要な分だけにします。赤と緑だけで区別せず、カラーユニバーサルデザインに配慮した配色(Okabe-Itoの配色、viridisなど)を使い、IllustratorやFijiの色覚シミュレーションと白黒表示で読めるかを確かめます。
- 07
個々のデータが見えるように示す
平均値だけの棒グラフより、個々のデータ点を重ねた図や箱ひげ図、バイオリンプロットのほうが、データの分布が伝わります。比較には統計検定を行い、その方法を説明文に書きます。
- 08
Excelの既定のスタイルのまま使わない
影や太い罫線は外し、既定の配色は変えます。グラフはGraphPad Prism、Rのggplot2、Pythonのmatplotlibなどで作ると、論文向けの体裁に整えやすくなります。
図のサイズ・解像度・ファイル形式
数値は代表的な例です。必ず投稿先の投稿規定で確認してください。
| 項目 | 目安 | 例 |
|---|---|---|
| 幅 | 1段幅か2段幅に合わせて作る | Natureは1段89mm・2段183mm、Elsevierは1段90mm・1.5段140mm・2段190mm |
| 解像度 | 掲載サイズ(実寸)で、写真は300dpi、写真に文字や線を重ねた図は500〜600dpi、線画やグラフは1000〜1200dpi | Elsevierは最低でも写真300dpi、写真と線画の組み合わせ500dpi、線画1000dpi |
| ファイル形式 | 写真はTIFF、線画やグラフはPDFやEPSなどのベクター形式。線や文字を含む図ではJPEGは避ける(圧縮でにじむため) | PowerPointの図はPDFで書き出す。TIFFを求められたら、そのPDFから変換する |
| 文字の大きさ | 掲載サイズに縮小した状態で読めること | Natureは5〜7pt |
| 色 | オンライン掲載はRGBが一般的。印刷用にCMYKを求める誌もある | 投稿規定の「artwork」「figure」の項を確認 |
図を作る手順
複数のパネルからなる図は、先に配置を決めてから各パネルを作り直すと、仕上がりがそろいます。
- 01
載せるパネルを選び、配置を決める
本文の流れに沿ってパネルを選び、縦横比は仮でかまわないので並べてみます。凡例やラベルを入れる場所もこの段階で確保します。
- 02
決めた比率で各パネルを作る
グラフは解析ソフトで、模式図は描画ソフトで、決めた比率と文字の大きさに合わせて作り直します。
- 03
組み立てて整列させる
IllustratorやInkscape、PowerPointでパネルを1枚にまとめ、パネル記号を付けて、端と間隔をそろえます。
- 04
書き出して、掲載サイズで確認する
投稿規定の形式と解像度で書き出し、実際の掲載サイズで文字と線が読めるかを確認します。最終投稿では、図を1つずつ別のファイルで提出するのが一般的です。
用途別のソフト
論文の図は、1つのソフトで全部を作るより、用途ごとに使い分けるのが一般的です。
| 用途 | 主なソフト | ポイント |
|---|---|---|
| グラフ | GraphPad Prism、R(ggplot2)、Python(matplotlib)、Excel | Excelは既定のスタイルを変えてから使う |
| 模式図 | PowerPoint、Illustrator、Inkscape(無料)、BioRender、Scientific Figure Generator(AI) | 線の意味と色のルールを先に決める |
| 図の組み立て | Illustrator、Inkscape、PowerPoint | 整列機能を使い、ベクター形式で保存する |
| 顕微鏡画像 | Fiji(ImageJ) | スケールバーを入れ、明るさの調整は画像全体に均一に行う |
| 化学構造式 | ChemDraw | 誌が指定する描画設定がある場合はそれに合わせる |
| 分子の立体構造 | PyMOL、UCSF ChimeraX | 構造データ(PDBなど)から描き、出典を示す |
| プラスミド・クローニング | SnapGene | 配列ファイルから地図を書き出す |
画像の加工でしてはいけないこと
データを示す画像の加工については、多くの出版社がほぼ共通のルールを定めています。不適切な加工が見つかると、掲載後でも訂正や撤回の対象になります。
- 画像の一部だけの明るさやコントラストを変える(調整は画像全体に均一に行う)
- 別の画像や別のレーンを、境界を示さずに切り貼りする
- 要素を消したり、付け加えたりする
- 同じ画像を、別の条件の結果として使い回す
- 生成AIでデータの画像を作ったり加工したりする
画像全体への均一な明るさの調整や切り出しは一般に認められています。比較する画像や対照にも同じ処理を行い、非線形の調整はその旨を説明文か方法に書きます。加工前の元画像は保存し、求められたら提出できるようにしておきます。
図の説明文(figure legend)の書き方
「図の説明文」「キャプション」「figure legend」はほぼ同じものを指します(図の中で色や記号の意味を示す「凡例」とは別です)。本文を読まなくても、図と説明文だけで内容がわかるように書きます。英文誌では、次の順で書くのが一般的です。
1タイトル
図が示す内容か結論を1文で書きます。
2各パネルの説明
(A)、(B)のように(Natureではa、b)、パネルごとに何を示しているかを書きます。
3方法と統計
サンプル数(n)とそれが何を指すか(マウスの匹数、独立した実験の回数など)、エラーバーが示すもの(標準偏差か標準誤差か)、統計検定の方法とP値を書きます。
4スケールバーと略語
スケールバーの長さと、図中の略語の正式名称を書きます。
Figure 2. Loss of gene X reduces Y in mouse liver. (A) Representative images of liver sections from wild-type (WT) and X-knockout (KO) mice stained for Y; images are representative of three independent experiments. Scale bars, 50 µm. (B) Quantification of the Y-positive area. Each dot represents one mouse (n = 6 mice per genotype); bars indicate the mean and error bars the s.d. **P < 0.01, two-tailed unpaired Student's t-test.この例文は構成を示すためのもので、実際の研究結果ではありません。書式はCell Press系の例で、Natureでは「Fig. 2 | …」「a, …」の書式になります。本文と同じ説明を繰り返しすぎないようにし、略語を説明文の最後にまとめる誌もあります。
投稿前のチェックリスト
- すべての図とパネルが、本文で言及する順に並んでいる
- 図の表記(Fig. 1 / Figure 1)とパネル記号の書式が投稿規定どおり
- フォントが統一され、掲載サイズで文字が読める
- 軸ラベル、単位、凡例、スケールバーが図の中にある
- 色だけに頼らず、白黒でも区別できる
- 解像度とファイル形式が投稿規定を満たしている
- 画像の加工は全体に均一で、説明文か方法に記載している
- 他の論文の図を使う場合は、転載の許諾を得ている
- AIで作った図がある場合は、投稿先の方針を確認し、使用を明記している
このサイトでできること
Scientific Figure Generatorは、模式図やグラフィカルアブストラクトなど、説明のための図をAIで作成します。グラフや顕微鏡写真など、データを示す図は作れません。作成前に構成を確認でき、図中のラベルの誤字は無料でチェックできます。ただし、2026年10月時点でNature Portfolioの各誌は生成AIによる画像を原則として認めておらず、Scienceのジャーナルは編集者の明示的な許可を求めています。投稿前に投稿規定を確認してください。

