論文・学会発表・申請書の図に
論文の模式図の書き方
模式図は、構造や仕組み、手順を必要な要素だけに絞って示す図です。このページでは、論文で使う模式図の種類と例、書き方の手順、よくある失敗をまとめました。下の欄に描きたい内容を日本語で書けば、AIが構成を提案し、承認後に図を作成します。
例:「シナプス前終末から神経伝達物質が放出され、後膜の受容体に結合する流れを模式図に。再取り込みも描く」
模式図とは
模式図(もしきず)とは、対象の構造や仕組み、要素どうしの関係、手順などを、伝えたい点に絞って単純化した図です。実物の見た目や正確な縮尺ではなく、「何が、どこにあり、どうつながるか」が読み取れることを重視します。論文に載せるイラストの多くは、この模式図にあたります。
論文に載せる図表には、模式図のほかに、グラフや顕微鏡写真などデータを示す図、表、グラフィカルアブストラクトがあります。観察記録としてのスケッチとも役割が異なります。
| 種類 | 示すもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 模式図 | 構造、仕組み、関係、手順 | 実際のデータではないため、測定値を描いたように見せない |
| データを示す図(グラフ・写真) | 実験で得た結果 | 条件、スケール、統計情報を添え、データを忠実に示す |
| 表 | 数値や条件の一覧 | 比較したい項目が行と列で読み取れるようにする |
| グラフィカルアブストラクト | 論文全体の要点 | 模式図を使うことが多いが、目的は論文の要約 |
| スケッチ(観察図) | 実際に観察したもの | 見えたとおりに描き、模式図のように省略や強調をしない |
論文のどこで使うか
同じ研究でも、置く場所によって模式図に載せる情報は変わります。先に「どこで使う図か」を決めておくと、要素を選びやすくなります。
緒言
すでに知られている仕組みを図示し、本研究がどこに着目したかを示します。
材料と方法
実験デザイン、群分け、装置の構成、解析の流れを示します。文章だけでは追いにくい手順に向いています。
結果
何を操作し何を測ったかや、結果から分かった関係を、データを示す図と対応させて示します。
考察
結果から提案するモデル(working model)を示します。実験で支持された関係と、仮説にとどまる関係は、実線と破線などで描き分けます。
グラフィカルアブストラクト
論文全体の問いと結論を1枚にまとめます。
グラフィカルアブストラクトの作り方申請書・学会発表
科研費などの申請書では、白黒で印刷されても読めるようにします。スライドやポスターでは16:9などの比率に合わせ、文字を大きくします。
模式図の4つの種類と例
Scientific Figure Generatorで作成した8つの例を、種類別に紹介します。掲載論文の図ではなく、このツールの作例です。図中の文字は英語です。「この構成で作る」を押すと、同じ構成の指示が入力欄に入ります。
構造図(断面図・分解図)
装置や電池、組織などの内部を断面で見せたり、部品をばらして並べたりします。部品の名前と位置関係を伝えたいときに使います。


機序・経路図(メカニズム図)
分子や細胞、物質がどうつながり、何が何に作用するかを示します。シグナル伝達経路や作用機序の図がこれにあたります。


手順・研究デザイン図
試料の準備から解析まで、実験や調査の流れを順番に示します。材料と方法の節や研究計画書に向いています。


循環・プロセス図
地下水の流れや地球科学的な過程など、複数の場所にまたがって進む現象を1枚の断面に示します。


模式図の書き方:5つのステップ
どのソフトで描く場合でも共通する手順です。
- 01
伝えたい関係を1文で書く
「AがBを活性化し、その結果Cが増える」のように、図で伝えたいことを先に文章にします。登場する要素と矢印の向きが、ここで決まります。
- 02
種類と流れの向きを決める
構造を見せるのか、仕組みか、手順か、循環かを決めます。流れは左から右、または上から下のどちらかにそろえます(循環図を除く)。
- 03
記号と色のルールを決める
活性化は矢印、抑制は先端が平らな線(⊣)、仮説の関係は破線など、線の意味を先に決めて図全体で統一します。色は役割ごとに2〜3色に絞り、赤と緑だけで区別しないようにします(カラーユニバーサルデザイン)。
- 04
配置してラベルを付ける
主役の要素を中央か左上に置き、ラベルは短い名詞にします。細胞内と細胞外、核と細胞質のように、反応が起きる区画を線や背景で分けると読み取りやすくなります。
- 05
掲載サイズで確認する
論文に載る大きさ(1段幅なら約9cm。Natureは89mm、Elsevierは90mm)まで縮小し、白黒でも文字と矢印が読めるかを確かめます。最後に、内容を知らない人に見せて、意図どおりに読めるかを確認します。
よくある失敗と直し方
- 矢印の意味がばらばら
- 同じ矢印を「活性化」「移動」「時間の経過」に使い回さず、線の種類を分けて凡例で示します。
- 要素を詰め込みすぎる
- 1文で書いた関係に出てこない要素は、思い切って外します。補足は図の説明文(figure legend)に回します。
- 確かめた関係と仮説の区別がない
- 仮説の部分は破線や「?」で示し、説明文にもその旨を書きます。
- 縮小すると読めない
- 編集画面の拡大表示で判断せず、掲載サイズで確認します。ラベルの数を減らすのも効果的です。
- 色が多く、意味が伝わらない
- 同じ種類の要素は同じ色にそろえ、強調したい1か所だけ別の色を使います。
- 模式的なグラフをデータのように見せてしまう
- 模式図の中のグラフには軸の数値を入れず、実際の結果は自分のデータから作ったグラフで示します。
AIで模式図を作る場合
このページの入力欄に、描きたい内容を日本語で書いてください。AIが描く要素、配置、ラベル、必要な枚数分を提示し、承認するまで図は作成されません。仕上がった図は、直したい部分だけを囲んで修正でき、図中のラベルの誤字は無料で確認できます。
描画にはOpenAIの汎用の画像生成モデルを使っています。2026年10月時点では、Elsevier(Cell Pressを含む)やPLOS、Wiley、MDPIなどが、説明のための模式図であればAIの使用の明記を条件に認めています。一方、Nature Portfolioの各誌は原則として認めておらず、Scienceのジャーナルは編集者の明示的な許可を求めています。投稿前に投稿規定をご確認ください。
グラフィカルアブストラクトの場合の各社の方針AIでできないこと・しないこと
- AIは実際のデータを読み込んで描くわけではありません。グラフ、顕微鏡写真、ゲルの画像など、実験データの代わりになる図には使わないでください。
- 分子の正確な立体構造や、縮尺の正確な地図は描けません。
- 内容が正しいかどうかは保証しません。矢印の向きやラベルは、必ずご自身で確認してください。

